【エッセイ】 祖父母の喧嘩

 
祖父と祖母が亡くなって早いもので5、6年経つ。おじいちゃん子であり、おばあちゃん子だったわたしにとってその別れは辛かった。とはいえ祖父も祖母もわたしに”思い出”という置き土産を置いていってくれたので今回はそのことについて語りたい。
わたしが祖父母のことについてよく覚えているのは「夫婦ゲンカ」を散々していたこと。
祖父は短気でカッとなるとすぐキレる人だった。一方、祖母は自分が正しいと思ったら譲らない頑固な性格だった。
そんな二人だったからしょっちゅうケンカをしていた。
孫のわたしの前ではそこまで争わなかったが、ちょっとわたしがその場からいなくなると怒鳴り合いのケンカを始めていた。
父の話では結婚当初からよくケンカをしていたとのこと。
何十年も一緒に暮らしているのになんでそんなにケンカするのか幼心に疑問だった。
そんな二人のケンカだが、面白いところもある。
それは、ケンカするたびにお互いに「家からでていけ!!」と言い合うのだがいつも家から追い出されるのはたいてい祖父だった。
わたしが知っている限り祖母が家を出ていったことは記憶していない。
ケンカして負かされているのは常に祖父の方。
祖母は無敗だった。
ここからはわたしの考察だがなんでも祖父母は恋愛結婚で祖父が祖母に惚れていたという話もあるから、惚れた方が弱いのか?と今では思っている。
いつもケンカに負けて家を飛び出していた祖父の姿は今思い出すとちょっとかわいかった。
そんなケンカ三昧の夫婦だったが祖父の方が先にお迎えが来た。
その時、もう怒声を上げることのない祖父を見て祖母は号泣して「もうすぐわたしも行くからね。」としきりに語りかけていた。
あんなに罵詈雑言を言い合っていた祖父母だが二人には二人だけの夫婦関係があったのだな、と思う。
ケンカするほど仲が良いとはこのことを言うのだと実感した。
あの世で仲良くケンカしているといい、そう思える祖父母たちだった。

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