さてはて、なんとか新神戸に到着。長野から新神戸まで特急と新幹線乗り換え4時間程度。うーん、文明の利器は素晴らしい。
しかし、ここで問題が。
徳島に向かうバスの乗り場がわからない。どうやら駅近くのホテルのバス停らしいがGoogle Mapで調べてもどうやってそこに行けるのか検討もつかない。
乗り継ぎの時間は10分。新神戸を全速力で迷いまくる。最後は「あ、もう諦めた方がいいかも・・・」と観念しかけた。
それでも時間ギリギリになってなんとかバス停を見つけ、滑り込み乗車することができた。
ホッと一息ついてバスに揺られること1時間余り。瀬戸内海を渡り、淡路島を通って四国は徳島の鳴門に到達した。
鳴門で降車すると目の前は瀬戸内海を望む景色が私をお出迎え。
潮風を感じながら、散策すると「潮風」というお食事処を発見。なんでも「鯛茶漬け」が名物らしい。
長野県ではまず食べられないであろう料理だ。
すぐさま、入店。鯛茶漬けを注文し、待つこと10分。分厚い鯛の刺身が、ほかほかのご飯に乗ってやってきた。
一口食べれば鯛の濃い味が口の中に広がる。途中からワサビ、刻みネギなど薬味を入れつつ、最後はスダチを絞ってフィニッシュ。
食べたあとは感無量だった。
その後、世界中の絵画のレプリカが飾られる「大塚国際美術館」に向かう。
大塚国際美術館は全ての絵を見て回るのに4キロ歩かなければならないほど大きな美術館だ。
その特徴はズバリ、「本物」の美術品が一切ないこと。すべて陶器に本物の絵を写した偽物ばかりの美術館であること。
偽物とはいえすべて原寸大の迫力のある絵画には間違いがない。
ゴッホの「向日葵」やレオナルドダヴィンチの「モナリザ」、ピカソの「ゲルニカ」などの名画が揃っているわけだ。
私が特に気に入ったのはムンクの「叫び」。
詳しいことはわからないが一目見ただけで感じた「狂気」は私の脳内に衝撃を与えた。
この「叫び」は絵の中の人物が叫んでいるのではなく、突如聞こえた果てしない叫びに耳を塞いで慄いている人物が描かれているのだ。
この絵を見て私は思春期のトラウマを思い出した。
統合失調症になり始めた頃、冬の日。家にも学校にも居場所がなくて一人下校の途中で「もし、この世のすべてのものから嫌われたら、どうしよう?」と頭をよぎったとき。
急に世界中から「お前はこの世に存在してはいけない!」と暴言を浴びせられたように感じた。
私はとっさに耳を塞ぎ、唇をキッと結んで耐えようとした。
その時の自分がまさにその絵の中にいたのである。
もしかしたら、作者のムンクと私は似ているのかもしれない。
狂気と正気の狭間で綱渡りをするような、そんな感覚をお互いに感じていたのだろう。
そんなことを思ってしまった。
やはり、絵画という芸術はある種、人の心の一瞬を切り取ったものを保存しているのかもしれない。
だとすれば、この美術館は古今東西の人の心を保管している、そんな場所なのか?
興味深かい。
大塚国際美術館を堪能したあとは鳴門の海が作り出す、神秘の現象「渦潮」を見に行った。
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